テレビ番組 NHK
テレビドラマレビュー:「ディロン・運命の犬」
(出演/樋口可南子、大杉蓮、平田満、関口知宏、池内淳子、麻生美代子他)
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第1回
5月20日(土)オンエア分:★★★★
迷いに迷って、結局見ちゃいました。。
犬、ことにレトリバー系の子たちってどうしてこんなに健気なんでしょ・・。
見るからに人の良さそうな誠実な眼差し、時折見せる困ったような表情、大きな体に大きな顔・・もうただその姿を見るだけでイチコロのあたくし。・・なので、採点はかなり甘口かも、おホホ・・これぞ役得。
でもね、地味だけど、ドラマとしても結構良い感じでした。CMが入らないから1時間と言ってもかなりじっくり見られるし、何かと画面も音も騒々しい民放と比べると静かでゆったりしてる。まぁ、その分お行儀がいいと言うか、NHK的オブラートには包まれておりますが(苦笑)。
13歳のディロン、もう目も見えないし足下もおぼつかない・・。お話はそこから8年前、平成10年に遡る。
主婦の麻利(樋口可南子)は、ある日屋外のカフェテラスで大きな犬と出会う。
フサフサとした毛に覆われたゴールデンレトリバー風の大きなその犬は、麻利の足下に寄り添うように座るが、何かの気配を察してすぐ行ってしまう。
すぐに外国人の男性が犬を捜しに来た。英語が分からない麻利に代わって夫の耕平(大杉蓮)が話を聞くと、その犬はディロンといい散歩中にリードが外れてしまったらしい。
ある日、麻利はフレンズというペットショップでディロンと再会する。屋外に置かれた小さなゲージで窮屈そうに体を縮めるディロン・・。気になる麻利が後日再訪すると、もうディロンの姿はなかった。店員は『持ち主がいなくなり、この間も脱走してお婆さんを襲ったから仕方がない』と言う。
その足で保健所に行った麻利は、薄暗い檻でうずくまるディロンを見つけそのまま引き取ってしまう。。
ここで、登場人物たちを先に整理しておきましょ。。
麻利は結婚15年目の主婦で子供はなく、最近買ったばかりの家に引っ越してきてまだ間がない。3年前まで出版社に勤めていたが、そこで何か不条理な出来事に遭い、そのストレスで体調を崩し退社した様子。夫・耕平とは仲が良さそうだが、近所に独りで住む姑・美佐江(池内淳子)との関わりには消極的。一戸建てを買ったのに夫も姑も同居を言い出さないことが気にかかっているが、かと言って自分からはその件は持ち出さない・・微妙な状態。
その日帰りが遅かった耕平は、翌朝庭にディロンがいるのを見て驚く。
「犬だ・・。犬がいる・・」
「はい・・。説明するっ、帰ったら説明するから」
そう言って慌ただしく耕平を送り出した麻利は、フレンズへ。ディロンの飼い主はケビンというオーストラリア人でブリーダーだったが、犬を預けたまま帰国。
オーストラリア・ゴールデンであるディロンはホントなら『種犬』として価値があるが、病気を持っているらしいと言われる。
そういえば確かに元気なく、ご飯も食べないディロン。気づくと血尿も出していて、麻利は大慌てで動物病院へ連れて行こうとするが、するとディロンは元気いっぱいで嬉しそうに走り出す。
獣医の森山(関口知宏)は、血尿は恐らく過度のストレスから来る膀胱炎だろうと話す。
「そういえばペットショップで、酷い扱い受けてました。保健所には簡単に引き取らせるし・・もうどういう神経してるのかしら。動物を扱う商売なのにっ」
「困ったもんだ・・」
「ホントにっ」
「あなたがね・・」
「・・え?」
「にわか動物好きの人ってのは、とかく相手の立場に立ってモノを考えなくなる。ペットショップもボランティアじゃない、商売なんだから」
「え・・まぁ、それはそうですけど・・」
「最近町で野良犬見かけなくなったでしょ?」
「あ、はい・・」
「運が良いよねぇ、この子は。保健所に行ったんでしょ?この子、引き取りに」
「はい」
「いつ?」
「昨日です」
「この子以外、目に入りませんでした?同じところに居たでしょ?他にも沢山ワンちゃんたちが。・・あの子たちは野良犬じゃなかった。人間の家庭で一緒に暮らしていた子たちだ。昨日って言ったら、そうだなぁ・・あと数日もすればもうこの世にはいません」
そう言われて初めてあの暗い檻で、悲しげに泣いていた他の犬たちを思い出す麻利。弱々しくシッポを振り、檻に手をかけて見ていたのに・・。
ディロンを診た森山獣医は、この子は生まれてからあんまり外を出歩かせて貰ってないだろうと告げ、シャンプーや散歩の際はリードをしっかり持てとアドバイス。帰宅後、麻利は早速ディロンをシャンプー(楽しそうで、めちゃめちゃ羨ましい・・)。

その夜、帰宅した耕平は庭にディロンが居ないことにホッとし、ソファでほーっとため息。うーんと手を伸ばすが、ソファのピンクの毛布に触れてギョッとする。
恐る恐るその毛布をめくると、ぐっすり眠り込んだディロンが・・。
そこに耕平の帰宅に気づいた麻利がやってくる。目で『何?どーするの?』と問いかけてくる耕平に『病院で診て貰ったら膀胱炎だった。ずっと家の中で暮らしてたらしい』と、勝手に話す麻利。
「それで?」「うん・・」「飼うの?」「ってゆーか・・」「何っ?」「駄目?」
事前に耕平が犬が苦手と聞いてたから、もっとその辺で凄く揉めるかと予想してたんだけど拍子抜けするほど良いダンナで(笑)、ここは麻利にうまくかわされちゃう。
そして、就寝間際、仕事で優秀だった妻のために『楓出版』という再就職口を見つけ勧めてくれる。
「どうする?その気がないなら断るけど」
「そうねぇ・・この家のローンもあるしね」
「いや、そういうつもりで言ってるんじゃないんだぞ」
「分かってる(笑)」
「なぁ?麻利・・まだ不安か?前とは違う職場だし、あの時みたいに理不尽な人間関係に翻弄されることもないだろうし。大体前のところがおかし過ぎたんだよ。君は頑張ってた」
「・・そう言えばあの頃、私血尿まで出してね・・」
「うん、怖いなぁストレスって」
と、話していると寝室のドアの向こうからカリカリと引っ掻くような音・・ディロンだった。リビングに連れて行った麻利は、よしよしとしてるうちにどーやらそこで眠ってしまったらしい。
翌朝早く目覚めた耕平が、麻利がいないことに気づき階下に降りてみると「散歩に行く」というメモ。やれやれという顔をしながらも、怒ったりはしない良いダンナ・・。
その頃散歩に出ていた麻利はサッカーの朝練帰りらしい小学生の男の子たちと出会うが、その中の一人の子がディロンという名を聞き「この犬だっ!うちのお祖母ちゃんをケガさせたのはこの犬だっ」と叫ぶ。
その夜、麻利は耕平に「どうしてもディロンが人を襲うような子には思えない」と話し、どうも日本語が分からないようだから英語で話しかけてみてと頼む。
耕平がしどろもどろで「Come here!」と言うと、すぐに立ち上がりズンズンと迫ってくるディロン。「Stay here!」と言えばその場で座るディロン。
まぁ、良くできたと拍手した麻利は、『前の飼い主がブリーダーだったからちゃんとしつけされてる』『日本語が分からなくて心細かったんだよね?』と懸命にアピール。困り顔の耕平をよそに、その日も麻利はディロンと一緒に眠ってしまう。
そんなある日、突然姑の美佐江がケーキを片手にやってきた。ケーキを食べながらぎごちなく話す嫁と姑。麻利は、美佐江がディロンのことも楓出版への就職話も知っていたことに少し吃驚。
その夜、麻利たちは待ち合わせて外で食事。麻利は美佐江がやってきたことを話す。怒ってるのではないけど、耕平が美佐江にいろいろ話してることもあり、訪問の目的をあれこれ気にする麻利。すると、その場で耕平は美佐江に電話して麻利は大慌て。
「もぉっ、そんな電話したらお母さんが気を悪くするじゃないっ」
「そう頻繁に顔出されたら、君だって落ち着かないだろ?」
「・・・」
突然行ったりしてお袋も気にしてたよ、と言った耕平は話を変えるように『再就職の話もあるし、そしたら二人とも家を空ける。やっぱり犬は無理じゃないかなぁ』と話し出した。
「それは大丈夫だと思う。ちゃんとしつけされてるし。・・やっぱり犬、嫌い?どうしても駄目って言うなら・・」
「いや、嫌いってワケじゃないんだけどさぁ。何かこう、苦手っていうのかなあ」
「ごめんね・・」
「いや、あの・・」
そーんな微妙な会話を交わした後、二人が帰宅してみるとリビングの中はメチャクチャ・・ディロンの仕業だ。
「ディロンっ!もぉっ、こんなことしちゃ駄目でしょっ!もぉ、やだぁっ!」と叫ぶ麻利、「掃除機持ってくるよ」とあくまで穏やかな耕平・・(苦笑)。
森山獣医に電話した麻利は、それはあなたがいなくてディロンが淋しかったからだと言われる。きつく叱ってしまったと話すと、『何か悪さをした時はその瞬間に怒ってあげないと、何故叱られているのか分からない』とアドバイスされる。
小さな頃から、大きな犬を飼うのが夢だった麻利。でも犬の習性等はほとんど分かっていないらしい・・これは、なかなか困った事である。
何時だったか、「動物のお医者さん」というマンガの影響でシベリアンハスキーが流行し、その後「馬鹿犬」だの「扱えない」だのと言って捨てたり処分しようとする馬鹿飼い主が急増したことがあったっけ。

元々オオカミの血を引くこの犬は、日本人がイメージする「良い犬」とはかなり違うけど、決して馬鹿じゃない。暑さも湿度も苦手なのにいきなり慣れない国に連れてこられ、無理な繁殖をさせられ、挙げ句馬鹿犬扱いされちゃって・・。
犬に限らず有名になっちゃった動物は、その後みんな大変な目に遭う。こんな時日本ってホントに浮ついた国だなぁと思う・・自分も含めてだけど。。
いかん、ちょっとマジになっちゃいました。。
ただ好きなだけで、犬を知らないままディロンを迎え入れた麻利はだんだんその実情を知ることになります・・。
ディロンと散歩に出た麻利はその途中で、よく吠える白い犬と遭遇。その犬は勝手に興奮して勝手に転び、足を少し痛めてしまう。「どうしてくれるのよっ」と怒る白犬の飼い主・・麻利は森山獣医のところへ連れて行く。
『あんな大きな犬飼ってるんだったら、常にそれなりに注意してないとっ。うちの子が殺されるところだったじゃないっ』と一方的に責める白犬の飼い主。
森山獣医は「はいっ、もう大丈夫。大したケガじゃないんだから、ね?奥さん、はいっ連れて帰って」と言い、治療代もいいからと白犬一味を追い返す。
「やれやれ・・」
「あの、前にもお婆さんを襲ったことがあるらしいんです、ディロン・・」
「そんなことする子じゃないはずだよ、ディロンは。今日のことだって向こうから飛びかかってきたんでしょ?本当は」
「・・はい」
「ワンちゃん同士の揉め事っていうのはね、大体大きい方が責められるものなんですよ。大きいワンちゃんは大きいってことだけで誤解されやすい」
「はぁ・・」
「手に負えませんか?正直なとこ」
「あ、はぁ・・」
「良かったらディロンの引き取り手、こちらで探してあげますよ。家の中でも外でもね、あれだけの大型犬となると経験の浅い人にはとても難しいというのが実情です。冷たいようだけどお互いのためでもあるし、あの子には何も決められない・・あなたが決めなくちゃいけないんですよ」
「。。。。」
その夜、麻利は『大きい犬は誤解されやすい』という言葉を思い返し、翌朝決心したように以前「お祖母ちゃんがディロンの襲われた」と話した男の子と出会った場所へ・・。そして麻利は、男の子の家まで確かめに行く。
その子の母親が言うには・・道を歩いてたらいきなり飛びかかられて、腰を打って歩けなくなって大変だったらしい。ケガはまぁ大したことはないから、こちらとしては事を荒立てるつもりはないと言う。その時はまだディロンは手元にいたわけではないのに「どうも済みませんでした」と謝った麻利は、直接会わせてもらえないかと頼む。
すると、そのお祖母ちゃんはこの家に同居してるのではなく老人ホームにいる。そう聞いた麻利は、今度はトキ(麻生美代子)というお婆さんに会いに老人ホームへ。。
名前を名乗り『先日トキさんを襲った犬のことでお詫びとお見舞いをさせて頂きたい』と訪問の目的を告げると、トキさんは「あぁ、良かった。良かった」と言う。意外な反応に「え?」と戸惑う麻利。
トキさんは「ずっとあのワンちゃんに謝らなけりゃいけないと思っててねぇ」と、その時のことを話し始めた。
久しぶりの一時帰宅で近所を散歩してたら、そのうち道が分からなくなってしまい、ある神社の境内で疲れて座り込んでいた。途方に暮れていると、いつの間にかディロンが隣に座り心配そうに見ていた。そこに巡回中のお巡りさんが来て、大きな犬がいるのに驚いて走ってきた。ホントは襲われてなんていないのに、嫁に叱られるんじゃないか、また道が分からなくなったと馬鹿にされるんじゃないかと思って、つい襲われて動けなくなったと嘘をついてしまった・・。
「ごめんなさい。嫁に意地張りたいばっかりにあの可愛いワンちゃんを悪者にしちゃって・・。謝りたかったの、私。謝りたかったのよ」
「そうだったんですか・・」
関係ないけど、トキさんはフネさんでしたっ(喜)。どこかで聞いた覚えのあるやさしい声だなぁと思ってたら、エンドロールで『麻生美代子』さんの名前発見。ちょっと嬉しかったです。
で、やっぱりディロンは人を襲うような子じゃなかったと分かってすぐ、森山獣医から引き取り手が見つかったという連絡が入る。
「何かねぇ、オーストラリア・ゴールデンってのは人気があるらしくて、ベテランのブリーダーが是非引き取りたいって」
考え込む麻利にそばにいた耕平も、君が働きだしたら犬はねぇ・・と話しかける。
「俺、君は専業主婦のままでは勿体ないと思う。せっかくまた現場に戻れるのなら良い機会じゃないかと思う」と。。
そんな夫の言葉もあり、とりあえず面接だけでも受けてみようと思った麻利だったが、出かける間際にまた強い頭痛と吐き気に襲われる。
『仕事を辞めて3年、もう大丈夫』と思っていたが、体はまだ言うことを聞いてくれない・・。トイレから出てきて口をゆすぎながら泣き出す麻利に、ディロンがそっと寄り添っていた。
「ディロン、駄目かなぁ私、やっぱり駄目だよ」と、ディロンを抱きしめ子供のように泣きじゃくる麻利。
帰宅した耕平がベッドで横になっていた麻利に話しかける。その枕元には、ディロンが寄り添っていた・・。
「大丈夫か?」
「ごめんねぇ・・」
「ま、いいって。まぁさっ、気長に行こう。おいディロン、もういいぞ。下に行って寝れば?」
「こうちゃん」
「ん?」
「さっき獣医さんのとこに電話したの。ディロンはこれからもずーっとここに居ますって」
「麻利・・?」
「ねぇ、ディロン」
こうして正式に麻利たちの家族になったディロン。麻利はディロンを連れて老人ホームのトキさんを訪ねることに。
ほとんどペーパードライバーの麻利を気遣い、自分が運転していこうか?と言う耕平に大丈夫だと元気よく答える麻利。大きなディロンを後部座席に乗せ何とか到着すると、もうみんなが首を長くして待っていた。
トキさんは勿論、他のお年寄りにも大人気のディロンはみんなに頭を撫でられ忙しそう。それを離れたところから見ていた車椅子の男性に気づき、ディロンは近寄っていくが、その人はドアを閉めて離れていってしまう。。
帰り際、「今度はいつ来られるの?また来てね、おいでね」と別れを惜しむ老人たちとディロンを、あの車椅子の老人が遠くから見ていた。
車が走り出してもじっとその人を見つめるディロン・・麻利もその人のことが気にかかる。。〜次回へ。。
・・とまぁ、こんな初回でした。
前の職場で何があったのかは分からないけど、相当傷ついているらしい麻利にいつも寄り添うディロン、やさしく見守る耕平・・かなり羨ましいです(笑)。
それに何といっても、ディロンの可愛いこと。見てるだけで頬がゆるみっぱなしで、時々画面に話しかけてたりして他の人から見たらかなり危なそうです。ふふ。
保健所の光景は自分の経験とダブり息苦しくなりましたが・・でも、実際はもっと壮絶。。その自治体や施設にもよるけど、短い所は3日で処分され、その方法も欧米などと違い、苦しみ藻掻きながら逝きます。
中には、檻そのものが順次移動していき、何日目かになるとその檻ごとがガス室になるような大工場並みのシステムになっているところもあります。つまり、それほどの数をこなさなければならないということ。
どの子も人を見ると『どうして自分がここにいるの?』『早くお迎えに来て』と懸命に鳴き、しっぽを振り、檻に手をかけて訴えてくる。でも2〜3日経つと、どこかで自分の運命を悟るのか、瞳が輝きを失い、まるで黒い穴のようになっていきます。
うーん・・・・そんなことを考え始めると、もうそのことで頭も胸もいっぱいになって冷静ではいられなくなってしまう。
取り乱してうまく言葉になりませんが、このドラマが1匹でも多くの犬や猫たちを救い、今の状況を変えていくきっかけになればいいなと思います。。
(^^)/
原作「ディロン〜運命の犬」(井上こみち著)は幻冬舎